訪問歯科でよく遭遇するのが、豚毛の歯ブラシを愛好している方。
特に一定以上の年代を超えると豚毛歯ブラシの所持率は顕著に上がり、「歯ブラシなら豚毛に限る」的な根強い支持がうかがわれます。
患者さまのお宅で白い柄にこげ茶色のブラシ部という特徴的なコントラストを何度も目にするたびに、この「豚毛信仰」にどんないきさつがあってこの年代の方々の心だけを捉えたのかを考えてしまいます。
その理由について考えるのは別の機会にするとして、今回は豚毛歯ブラシの道具としての評価について取り上げます。
豚毛の歯ブラシは薬局などでの扱いも多くはなく目にする機会も少ないかもしれませんがインターネットなどではまだまだたくさん売られており、天然毛特有のやわらかさが謳われ歯や歯茎を傷つけないといった訴求も目立つようです。
ですが。。。
歯医者さんでこれを勧める先生や歯科衛生士さんは ほとんどいません。
そう、歯医者さんでの評価は著しく低いものなんです。
豚毛の歯ブラシを使っているのを見つけるや、使用を控えてナイロンのものを購入するよう指導する先生さえ少なくありません。積極的に使用を勧める先生などは皆無です。少なくとも筆者が知っている先生では・・・。
何が良くないかというと、
@ヘッド部が大きいものが多いので細かいところまで磨きにくいこと。
Aブラシにコシがなさすぎるためしっかり汚れが取れないこと。
B乾燥しにくいこと。
中でも特に良くないのは、
Bの乾燥しにくいことです
なぜ乾燥しにくいということが良くないのか・・・
それは ”衛生面” で非常に良くないのです。
お口の中には歯周病菌などの細菌が存在し、わたしたちはそれらの菌が増えないように日々ブラッシングを行います。
ブラッシングにより菌が付着した歯ブラシが細菌が好むある程度の湿度が保たれた状態で保管されていればこれらの細菌が増殖する環境を作り出してしまうこととなり、そうなればせっかくのブラッシングの意味がなくなってしまいます。
豚毛の歯ブラシは天然毛ゆえ乾燥しにくい。このことは豚毛はブラシの大きな弱点と言え、豚毛よりもナイロン製の歯ブラシに圧倒的に分があるのです。
豚毛でなくてもやはり細菌が繁殖しないような状態で歯ブラシを保管することは重要です。
使用したあとは歯ブラシを流水でよくすすぎ、できるだけ風通しのよいところで保管するのがベストでしょう(ちなみに今は家庭用の歯ブラシ除菌保管器なんてものもあるようですよ)。
いませんか?
お風呂場で保管している方、キャップをしたりケースに入れて保管している方・・・